【衝動篇_STORY】[第三章]グレーテル
※シナリオのネタバレになります。
ネタバレ嫌な人はブラウザバック推奨!
【衝動篇_STORY】[第三章]グレーテル
PART 3-1: |
ふらふら歩く、夜の森。 ガサゴソ聴こえる茂みの音。 |
ねえ、兄様。怖いです。 私に何かお話をして? ……ふふふ、そんなの嘘でしょう? 兄様ったら冗談ばかり。 |
… |
幸せそうな笑みを浮かべて、少女は1人でお喋りをする。 闇に覆われたのは道の方? それとも、少女の心でしょうか? |
それは本人さえも、わからない。 暗く深い迷いの森。 |
ねえ兄様、今度は何を作りましょうか? |
甘いクッキー? それともマフィン? |
ああでも食べ過ぎは駄目ですよ? |
だって魔女に見つかってしまうから。 |
ズット1人で話してるネー。 |
キモい!キモいヨー! |
PART 3-2: |
兄様の歌がとても好き。 なのに、どんな声だか思い出せなくなるのです。 |
PART 3-3: |
兄様の柔らかな手が好き。 だけど、あたたかさが思い出せないのです。 |
PART 3-4: |
兄様の優しい瞳が好き。 けれど、その色が思い出せないのです。 |
PART 3-5: |
兄様の早い足が好き。 でも、今は競争できないですね。 |
PART 3-6: |
兄様の腕が好き。 それなのに、抱きしめられた時の強さを忘れてしまったの。 |
PART 3-7: |
ねえ兄様。 私達、いつから手を繋ぐのをやめたのかしら? |
PART 3-8: |
ねえ兄様。 私達、いつから話すのをやめたのかしら? |
PART 3-9: |
ねえ兄様。答えて兄様。 私を1人にしないでください、どうかお願いですから。 |
PART 3-10: |
何度も目をこすっては、目の前の光景に目を見張る。 |
だってそこにあるのは愛しい愛しい兄様の姿。 |
手を繋いで夜の森。 お菓子の家で魔女に会い。 命からがら抜け出して。 そして、この手で― |
愛しいきょうだいの名を呼びながら少女は歓喜の涙を流した。 |
兄様……そこにいらしたのですね! |
違うよ、あれはナイトメア。 |
モウ1人の自分。 だけどナイトメア! |
ああ、兄様。早く私を抱きしめて! |
あ、駄目だコリャ。 全く話ヲ聞いてナイ。 |
だって現実ヲ見てないモン! |
END: |
その白い腹を引き裂き頬ずりして、ああ愛しき人よと咽び泣く。 |
それは闇に染まった自分だと、何度言われても理解しない。 |
その虚ろな瞳に映るのは、病的なまでに愛したきょうだいの姿。 |
……あの時私は何を間違った? |
… |
涙ながらに口づけた彼女は、お菓子のように甘かった。 |